家事分担をテーマに、2人の子どもを育てた高橋さん(50代男性)に過去の体験談を記事としてお書き頂きました。今回は会社の女性社員についてのお話。参考にして頂ければ幸いです。

 

tomobataraki_couple (1)

私!結婚することになりました

13年前の話になります。

9時始業の会社に、私は毎朝7時半に出社しています。

当然ですがこの時間帯に私の所属している開発部に人はいないのです。

そして私が席に座った時であります。

背の高い女性が私の目の前で立ち止まりました。

「わたし、結婚することにしました」

彼女はフロアー全体に響き渡るような大きな声で結婚宣言をしたのです。

これには私も驚かされました。

今まで彼女から結婚を考えているような話しがなかったからです

 

「それはよかったなあ!おめでとう」

私はこの言葉を言うだけで精一杯でありました。

それは私が開発部の課長になり、はじめて部下からこのような告白をされたからです。

私は目の前にいる29歳の女性社員よりも緊張をしていたと思います。

「ありがとうございます」

彼女はこれだけ私に言い残し、自分の席に戻って行きました。

わざわざ彼女は私の出社時間に合わせて会社に来たようです。

いつもは8時半過ぎに出社する部下になるからです。

でもこの時間であれば開発部のフロアーにはだれもいないから、こちらも都合が良かったことになります。

他の管理職が出社していると面倒なことになるからです。

そして彼女が結婚をすることは私しか知らないことになりました。

 

 

キャリア女性社員と私との繋がり

それは13年前から始まった年に1回のバーベキューパーティーになります。

最初にこのバーベキューパーティーを提案してきたのは、さきほどの結婚報告をした女性社員であります。

彼女は当時ある目的のためにこの会を提案してきたのです。

 

この女性社員は安藤文子と言い、今時にしてはちょっと古風な名前であります。

この彼女はどちらかと言えば美人さんの部類に入ると私は勝手に思っています。

それから彼女は仕事のできる女性として、社内の若い女性社員から人気があります。

それは関西の国立大学を卒業し賢く英語が得意でテキパキと仕事をしているからです。

私にはよく分かりませんが、女性ならこんなキャリアウーマンに成りたいと思うそうです。

しかし上司からみた彼女は仕事ができる優秀で部下になるのですが、性格が物凄く気の強いところがあり幹部からは取り扱い注意の女性でありました。

そして私が開発部に異動した時、私にもれなく付いてきた部下なのです。

それは約8年前に彼女が新卒で営業部に配属されてから私が彼女の教育係りをしていたからでしょう。

でも私はこの人事を決めた偉い人たちを今でも恨んでいます。その反面仕事ができる彼女には大変感謝しています。

 

 

私!専業主婦になりたくない 

彼女が結婚することを私に報告してから1週後のことになります。

私は彼女から結婚について相談したいことがあると言われ、彼女と食事に行くことになりました。

 

「高橋さん、私が仕事を辞めたいと言ったら如何しますか?」

これは彼女が結婚の報告にきた時と同じように、前振りがない状況で私に訊ねてきました。

それから私はこの彼女の質問に即答ができなかったのです。

それは今開発途中の新薬が頭に浮かび、引き止めるべきかそれとも引き止めないべきか悩みました。

たぶん彼女はその事もあり相談を急いだのであろうと思います。

「結婚相手は如何したいと言っているんだ?」

私は彼女が結婚をしても働いて欲しいと思いましたが、それを決めるのは彼女であり結婚相手であります。そのため私はこの場で答えることができなかったのです。

 

「わたしの母親が専業主婦だったから嫌いなのです。専業主婦が。」

私はただ何も言わずにビールを片手に持ったまま彼女の話しを聞いていました。

「わたし今の仕事は続けたいと思っています。高橋さんのお陰で憧れていた開発部に異動ができたからです」

ここでなぜ彼女が開発部に異動したか本当の理由を言いたくなりましたが、そんなことは口が裂けても言えません。

それは昨夜、妻から彼女の人生だから余計なことは言うなと強くご指導も受けていたからです。

 

「彼は古い考えを持っているタイプだから、会社を辞めて欲しいと言っています。だから悩んでいます。上司として高橋さんは如何して欲しいのですか。教えてください」

また彼女が私の気持ちを確認してきました。

私は返答に困り果てました。

そこで私は自分の気持ちを伝える代わりに共稼ぎをしている我が家のことを話したのです。

「安藤、僕のワイフがナースをしていることは知っているよな」

「ナース姉さんですよね」

私はその妻の言い付けに背き余計なことを喋り始めたのです。

「ああ、でも当直がある病棟ナースだけど家事と両立出来ているぞ」

結局、私は彼女の人生の分岐点で余計なことを言ってしまったのです。

たぶんこのことを妻が知ったら、今後安藤の話題が出る度に嫌味を言われるのだろうと思いました。

 

「そうだ!高橋さん、今度奥さまに会わせてください。ダメですか」

また彼女に驚かされました。

「でもそれはダメだ」

「なんでダメなのですか。部下が将来の選択肢に悩んでいるときに断るのですか。それって酷くないですか」

彼女は瞳を赤くして涙を流したのです。

この8年間の中で私がはじめてみた彼女の弱音を吐く姿でありました。

「わかったわかったから安藤、ワイフに訊いてみるよ。だから泣くのはよせ、みんなこっちを見てるよ」

この時、妻が北岳に登りたいと言い出したことを思い出しました。

なぜこのような状況になると女性はみんな泣くのだろう。

私は女性運のない男かもと思いました

 

「ところで安藤、結婚の相手はダレだ。俺の知っている男か?」

「研究所の佐藤くんですよ」

彼女は照れもせずサラッと言ったのです。

「あの男か、まさか佐藤くんが古風な男には見えないが」

「大阪に住んでいる彼の両親が煩いのです」

私は研究所の会議に出席した時に会った佐藤くんの顔を思い浮かべました。

彼は型的な理系タイプで大人しそうな男という印象でありました。

もしかして佐藤くんはマザコンかとも思いました。

 

 

我が家のバーベキューパーティー

翌朝の7時40分過ぎに私が席に座った時、また彼女が走ってきました。

「高橋さん、昨日はありがとうございます。ところで奥さまに私が言ったこと相談をして頂けましたでしょうか」

昨日の弱々しさなど微塵もなく、彼女はいつもの安藤文子に戻っていました。

「まだだよ。それに昨夜ワイフは当直だからね」

「良かった。わたし凄くいいアイデアを思いつきました。高橋さんの家でバーベキューパーティーをしてはどうかと、それもチーム全員で。如何ですか」

私は妻からはじまり気の強い女性に弱いようです。

「わかった。妻を説得してみるよ。その代わりにチーム全員はちょっと」

「その方が一石二鳥です。みんなに私の結婚のことも発表できるし、よろしくお願いします」

彼女は私の話しなど聞き入れず席に戻って行きました。

その日の夕方、彼女はチーム全員の都合がよい日をメモに書いて私の机においていきました。

これが13年間も続いている我が家で行われているバーベキューパーティーのはじまりであります。

 

 

「安藤さん、この度は婚約おめでとうございます」

妻の第一声からバーベキューパーティーがはじまりました。

「ありがとうございます」

「え、安藤さん、わたし、何にも聞いていません。狡いですよ」

チームの中で一番若い24歳の女性社員が頬を膨らませて言いました。

そして26歳・27歳・28歳の男性社員も驚いていました。

「安藤さん、結婚したら仕事はどうするのですか。今の新薬は熱い思いがありますよね」

男性社員の1人が彼女に訊ねたのです。

「今、考え中、それより中村くん、人の心配をする前にもっと勉強しなさい」

この時、私のチームがまだ若い連中なので彼女の退職は避けたと強く思いました。

 

「奥さま、凄く忙しい看護師の仕事をしながらよく家事と育児ができますよね。だって今日のお料理、凄く美味しいです」

彼女は共稼ぎ夫婦の秘密を聞き出したいようで妻の隣で喋りはじめたのです。

「ごめんなさい!その料理は主人と娘の由香里が作ったのよ。わたしが当直明けだから」

「ええ、課長、料理ができるのですか。冗談ですよね」

彼女は目を丸くして、超忙しい共稼ぎ夫婦である妻と私を覗き込んできました。

「わたしとパパで作りました。ママは寝ていました」

長女の由香里が彼女に言いました。

それから彼女は共稼ぎ夫婦の秘訣について妻への質問がはじめました。

それは長い時間続きました。

妻は彼女の悩み理解しているので丁寧に答えていました。

 

 妻の共稼ぎ夫婦相談室

「どのようにしたら男性が進んで家事をするのですか」

彼女は妻にストレートに質問をしました。

「免疫力をつけてあげること、子供もいっしょ」

「どういうことですか。わたしには理解できません。その意味を教えてください」

妻は自慢をするかのように私の顔を一度覗き込んでから彼女の質問に答えました。

「結婚生活がはじまった頃、わたしが救急救命センターで働いていたことは主人に教えてもらった」

「課長に聞いています」

この時、安藤の声に反応したように24歳に女性社員が妻の横に移動したのです。

彼女も共稼ぎ夫婦について興味を持ったようです。

「わたし、当時、何度も結婚したことを後悔したのよ。だって主人に悪いでしょ。新婚生活で1週間に2日か3日しか帰宅しない妻なんて普通じゃないでしょ。でも今となっては主人が天然記念物だと思うけどね。普通なら無理よね。ただそこで発見したことが、主人に免疫がついたことを。私がいなければ自分で料理をして掃除をして洗濯をするようになったわけ」

突然、安藤がわたしの顔を覗きました。

「課長、奧さんに放置されて家事ができるようになったのですね」

「ああ」

わたしは気の強い女性に囲まれて頷くしかなかったのです。

「安藤さん、でも守ることがあります。この方法は結婚してからすぐにはじめること。それは癌といっしょで早期発見、早期治療よ。わたしたちは新婚のときだから成功をしたのよ。これが子供でも生まれてからだと遅いのよ。だからナースの離婚が多いのよね。甘やかさないこと」

安藤は妻のアドバイスに対して何かを得たようでありました。

「奧さん、ありがとうございます。また相談してもいいですか」

 

このあと妻が共稼ぎ夫婦で大事なことを2人に講義を続けました。

「最後に共稼ぎ夫婦の先輩から一言。夫が家事をしたときは必ず褒めてあげること。わたしは主人に対して心から感謝していたから成功したけど、娘の由香里では失敗したのよ。母親としては失格」

 

この日が我が家でのバーベキューパーティーのはじまりになりました。

 

キャリア女性社員の決意

我が家でバーベキューパーティーをした後、彼女からは仕事を続けるのか退職をするのか報告はなかったのです。

そして結婚式の当日になりました。

彼女の結婚式には夫婦で招待されたのです。

 

「課長、奧さん、お話ししたいことがあります」と彼女から呼ばれたのです。

それも新婦の控え室です。

彼女は両親や兄弟を外に出して3人だけになりました。

「課長、奧さん、わたし仕事を続けます。会社は好きではないのですが、自分のために働きます。そして、いつか奧さんのように自慢できる夫婦になります。お世話になりました」

「わかった」

私は彼女の決心に喜びました。

それから結婚式で妻は娘の由香里が結婚をするときのことを思い浮かべたようで涙を流していました。

 

そして彼女が結婚をしてから第2回目のバーベキューパーティーが我が家で行われました。

彼女は夫の佐藤くんを連れてきました。

その時わたしは佐藤くんに相談がありますと言われたのです。

「高橋さん、嫁が怖いです」

2人だけでリビングの椅子に座ったとき、私は彼から言われたのです。

「僕は料理に洗濯、それに掃除すべてをやらされています。妻が家事をしない日が大半です。助けてください」

「そうか。それは大変だ。オレから安藤には言っておくよ」

「そのようなことをされたら、僕は妻に殺されます。ここだけの話しにしてください」

私は佐藤くんに対して協力することができなかったです。

バーベキューパーティー後、私は妻にこのことを報告しました。

妻はわかったと一言だけ返事をしてくれました。

 

その1週間後、佐藤くんから連絡があり感謝されました。

たぶん妻が彼女に何かをアドバイスしたようです。

 

それから半年後、彼女に子供が授かったのです。

 

 

時間はお金で買う

彼女は産休が終わり開発部に戻ってきました。

ここからが彼女の賢さが上手に動くようになったのです。

彼女は保育園に空きが出るまでベビーシッターを利用したのです。

私は保育園が決まるまで休むことを勧めました。

「高橋さん、私は決めました。時間はお金で買うのです」

「ええ、何だそれ」

私は彼女の決心に驚きそれしか言えなかったのです。

「2人で働いている共稼ぎだから、お互いに人生の目標は達成させようと2人で決めたのです。高橋さん夫婦とは少し違うのです」

私はこの言葉を聞いて彼女たち夫婦が新しい共稼ぎ夫婦の成功例になれば良いかと思いました。

 

それから彼女は時間をお金で買うことに徹底をしました。

少しでも家事の負担を減らすためと言い、自動のものを買うようになりました。

その度に私の席に来て、主人の負担がこれで減りましたと報告するのです。

 

 

その後、彼女は2人目の子供を出産。

ところが彼女は産休を半分以上残して復帰してきたのです。

その根性については会社は彼女を高く評価しました。

それは佐藤くんがあってのことだと私は上層部に伝えましたが、詳しい情報を知っている開発部の専務だけしか理解してくれなかったのです。

その頃研究所はフレックスタイム制を上手に活用するようになっていました。

そのこともあり夫の佐藤くんが子供の保育園の送迎をしていたようです。

私は彼女が働いてくれることに感謝をしましたが、佐藤くんのことが心配になり、食事に行く度、佐藤くんのガス剥きをしました。

 

私は、佐藤くんから夫婦の愚痴を聞くことしかできなかったのです。

私がこの共稼ぎ夫婦に協力できるのはこれだけです。

妻曰く「それでいいのよ、高橋ができる安藤さん夫婦へのカウンセリングは。」

そして私が彼女に言った、共稼ぎはできるという言葉は以外な方向に向いました。

 

 

 

42歳女性社員こんな共稼ぎ夫婦もいます 

それから5年ほど先になりますが、私が開発部の責任者になったとき、私のチームの後任として彼女を推薦しました。

彼女は会社で初めて、家庭を持ちながら、キャリアへの道を一歩進みはじめたのです。

ご主人の佐藤くんより先に彼女が昇格をしたのです。

共稼ぎ夫婦の男性女性の気持ちは、下地が無いからこそ難しいようです。

今後も佐藤くんとは、飲み友達として話を聞いていこうと思います。