結婚という生活苦から離婚という解放へ

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ホステスをしていた23歳の私は、ひと回り年上の従業員とできちゃった婚をしました。元夫は、さすが35歳まで独身貴族をつらぬいただけありマイペースを絵に描いたような男性で、口グセは「時期がくれば独立する!」でした。

 

 

 

 

息子が産まれてからも、元夫はいっこうに独立する気配がなく、家計は苦しくなるばかり。私は生後4カ月の息子を民間の託児所に預け、あふれる母乳パットをトイレで交換しながらホステスに復帰しました。

 

 

 

 

「夜中に子どもを起こさない主義」の託児所は、夕方に預けて早朝に送迎車で帰ってくるというシステム。月に6万円という破格でしたが、ほかへ移る気はありませんでした。当時は地元で虐待のニュースが多く、実際に息子もほかの託児所でケガをしたことがあったからです。

 

 

 

 

明け方に帰宅して朝7時まで仮眠。息子が帰ってきたら授乳、家事を終わらせて託児所に預けて出勤という忙しい日々でしたが、いつの間にか元夫が家事をして食事を作るようになっていました。私の収入が増えたからです。バカバカしくなって離婚を決めました。

 

 

 

 

離婚を強行した私には、息子の認可保育園への入所許可と母子手当が待っていました。これならやっていける!しばらく実家のお世話になりつつ、働きながら息子と2人で暮らすためのお金をためることにしました。

 

 

義理親と実の親からの孫がかわいそう攻撃

 

元夫の両親は、片親じゃ孫の将来がかわいそうだと大騒ぎしましたが、どう考えても離婚すれば生活が楽になるのは事実です。養育費をいただくなくても結構ですし、そうすれば貯金する余裕もできるんですよと伝え、やっと納得してもらえました。

 

 

 

 

次の問題は私の実の両親でした。息子が通うことになった保育園が実家の近所だったため、私の勤務中に時間外のお迎えをしてしまうのです。当然、下の子の入園のために順番待ちをしている家庭からはクレームが入ります。母子家庭だからと優先的に入園したくせに、本当は面倒を見る祖父母がいるのはけしからんというわけです。

 

 

 

 

園長先生から遠回しに注意されていることを何度伝えても、私の両親は「孫がかわいそうじゃないか!」の一点張り。どちらのおじいちゃんおばあちゃんも孫への善意が120パーセントで、まるっきり悪意がないのが始末に負えませんでした。

 

 

 

複雑な家庭環境イコールかわいそう

 

息子が年長さんになると同時に、晴れて息子との暮らしをスタートしました。17時までウェイトレスをして18時にお迎えというスケジュールは、時間の余裕が水商売時代とは雲泥の差です。2人分の炊事洗濯はあっという間に終わり、一緒にデザートのお菓子を作る時間までありました。

 

 

 

 

引越し先の保育園に通うのは、母子家庭、父子家庭、再婚家庭、祖父母と暮らしている子どもたち。家庭環境がバラエティに富んでいるため、「◯ちゃんと弟はお父さんが違うんだって」「うちとおんなじだね!」「◯くんのお母さんみたいな人はおばあちゃんなんだよ」「へえ、面白いね!」そんな会話が明るく飛び交っていました。

 

 

 

 

困るのは、園の行事に招待された誰かの親族が「かわいそう」を連発するときです。複雑な家庭環境イコールかわいそうだと思っている人たちは、楽しい雰囲気の園内を見回しながら大きな声で「かわいそうに、いろいろあるんでしょうねえ」「えらいわねえ、かわいそうにねえ」と口にします。

 

 

 

 

自分をかわいそうだと思っていない子どもたちに、それを聞かせないように気をつかう保育士さんが一番かわいそうでした。

 

 

 

 

シッターさんも学童もかわいそう

 

息子が小学校に入学してからは福利厚生の整ったコールセンターへ転職し、本格的にお金を貯めはじめました。夕方17時までの早番と21時までの遅番、プラス不定期の派遣バイトというスケジュールです。

 

 

 

 

放課後になると息子は学童保育に直行、早番の日は私が迎えに行き、遅番の日のお迎えと留守番は、市が紹介してくれたシッターさんを頼むことにしました。ボランティアなので1時間600円という低料金にもかかわらず、ラッキーなことに元保育士さんが見つかりました。

 

 

 

 

4年生からは、ひとりで留守番をさせるようにしました。晩ご飯は冷蔵庫に作り置いたものをレンジで温めるだけ。高学年からはガスコンロも使えるようになりました。家の片付けと洗濯は、私が帰宅してから一緒にするのが日課でした。

 

 

 

 

公私ともに生活が落ち着いてくると、考えごとをする余裕も出てきます。我が家をかわいそうだと言う人たちとの温度差に、私はそろそろゲンナリしていました。

 

 

 

 

「シッターさんも学童も作り置きご飯も、何をやっても結局かわいそうなの?」

 

 

 

 

やっとそこに隠された偏見に気がついたのです。

 

 

 

かわいそうという心理に隠された偏見

 

具体的には下記のような偏見に気がつきました。

 

 

 

  • 我が家が楽しそうなら、それは無理をしているから
  • 息子は常に寂しいに決まってる
  • 母親は離婚を後悔しているに違いない
  • 母子家庭の幸福度は低いはずだ
  • 2人きりの生活で楽しいわけがない

 

 

 

また、これらの偏見を裏切られると動揺するタイプの人たちもいました。職場で昇進したときの、母子手当をもらっているのにズルいんじゃないかという謎の攻撃や、「お父さんになって君たちを守ってあげるから」と迫ってくるストーカーなどです。ちなみに、母子手当は年収に応じて減額されますし、息子が義務教育のうちは再婚する気ゼロでした。

 

 

 

 

印象深いのは、息子が新しいゲーム機を持っていることや、私がブランド品を身に着けていることに眉をひそめるママ友。母子家庭が「ちゃんとした家庭」より幸せなのが許せなかったようでした。

 

 

 

 

子連れ再婚はかわいそう

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息子は行きたかった高校に通うために寮へ入り、私は再婚しました。たまたま相手が経営者だったので周囲の反応はさまざまでした。なぜか経営に参加しようとする一部の親族、打算的な玉の輿(こし)と非難する友人。そしてもちろん、自分が再婚するから子どもを寮に追い出すなんてかわいそうだとも言われました。

 

 

 

 

しかし、息子が進学先を決めたのは再婚前、寮を選んだのも本人です。すでに「ゴミを忘れず出す」「食器を洗う」「部屋を片付ける」「不潔にしない」といった最低限の生活力は身につけていましたし、反抗期も母親よりはおとなしいものでした。

 

 

 

 

少しおどろいたのは、息子が長期休みのアルバイト先を、毎年夫の会社にしたことです。10代の男の子が大人の男性と距離を縮めるには、ギクシャクしたお父さんよりも、腹を割って話せるバイト先の社長という関係の方が自然だったのでしょう。今は成人して、会社の後継ぎとして働いています。

 

 

 

 

往に跡へ行くとも死に跡へ行くな?!

 

「奥さんが出ていった男に嫁ぐのはいいけれど、奥さんが亡くなった男には嫁ぐもんじゃない」昔からよく聞きますね、私の再婚はまさにこれです。夫は長男なので、我が家の仏壇には夫の両親と亡くなった奥さんがいます。

 

 

 

ここだけの話、私は他人の幸福を不満に感じる面倒な人に、わざと「うちの仏壇には先妻さんが入ってるんですよ」とつぶやくことにしています。かなりインパクトがあるらしく、たいていは「あら!かわいそうに!」と、機嫌を直してくれるからです。

 

 

 

実際は、死に跡に嫁いでも幸せです。私は幼少期を信心深い祖父母の家で過ごしたため、「仏(ほとけ)さん」は身近でありがたい存在としてたたき込まれています。まして生前の面識がないのですから、人としては考えられず、あくまで仏さんは仏さんでしかありません。むしろ、離婚した元妻がどこかにいる方が嫉妬するような気がします。