今回はOさんの体験談として、家事分担をする男性・しない男性についてを書き綴って頂きましたのでご覧ください。
目次
共働き夫婦の家事負担。家事をする夫と、しない夫の違い
私は20歳半ばの頃、共働きの家事分担がうまくいかないことが原因で長年交際していた彼氏(以下、元彼)と同棲解消をした経験があります。
激務で終電帰りをしていた私が、ひとりで家事を全て負担している状況でした。
冷静に優しく家事分担をお願いしても、無視や舌打ちをされてしまい、まったく分担をしてもらえません。「なんで俺がしなきゃならないの?」と言われたのがとても印象的でした。
当時の私の帰宅時間は深夜0時頃。
定時で家に帰って、深夜まで何時間もゲームをしている元彼と一緒に暮らす意味を見出せず、同棲解消を申し入れました。
一方で、その後同棲した次の彼氏(今の夫)は、分担せずとも家事を自発的にこなす人でした。
夫が代休をとって、私だけが出勤をした日のことです。家に帰るとすべての家事が完璧に片付けてあり、作り立てのおいしい料理を出してくれました。
感動しながら感謝の言葉を言うと、「当たり前じゃない?」
と不思議そうに言っていたのが、腰を抜かすほどの衝撃だったのを覚えています。
共働きで家事をしない男性・家事をする男性両方と暮らした経験から、驚くほどの考え方の違いを目の当たりにしました。
それと同時に、ふたりを比較することで、元彼がなぜ家事をしてくれなかったのか今更になって分かってきたこともあります。
無意識に刷り込まれているジェンダー的役割
家事をしてくれなかった元彼と何度か話し合った中で、印象的だった会話を紹介します。
元彼「なんで俺が家事しなきゃならないの?」
私「フルタイムで働いて、同じ額の生活費を出し合って、なぜ家事だけ私が全負担するの?」
元彼「実家だって共働きだけど、母ちゃんが全部やってる」
私「女が家事をやれってこと?」
元彼「いや、そう意味じゃないけど」
両親の夫婦関係を見て「家事は母(女)がやって当たり前」ということが、無意識に刷り込まれているように感じました。しかし、本人も平成生まれの若い世代ですからジェンダー的な役割差別は良くないという意識もあるようなのです。
無意識のうちに矛盾を抱え、自分が言ったことを自分で否定しているのがとても印象的で記憶に残っています。
一方で、夫の実家に行った際に驚く光景を見ました。
義母がキッチンに立つと、義父、夫、そしてその弟、男3人がすぐにキッチンに行き、当たり前のように調理の補助をし始めるのです。
料理に合ったお皿を選んで並べ、味付けや、料理を見て必要な薬味を刻むなど、自発的にこなしていきます。
私が「すごい!みんな手伝うんですね!」と感心していると
義母「普通じゃない?」
義父「手伝いっていうか、みんなが主体だからね」
と言われ衝撃を受けると共に、なんだか恥ずかしくなりました。
聞けば、昔からこういう家庭だったようです。夫は「ジェンダーと家事を紐づける」という発想がない環境で育ったから、当たり前のように家事をこなすのだと感じました。
例えジェンダー差別は良くないと思っていても、幼少期に両親の関係を眺めることで刷り込まれる「ジェンダーと家事の紐づけ」というものが、深層心理に存在している人が男女ともに多いのだと思います。
私もそのひとりで、男女とも家事をすべきと思っていても、どこか「家事は結局女が主体」というような思い込みがあったことに気づきました。
今では、夫が家事をすることを手伝ってもらうと表現すると、とてつもない違和感を覚えます。つまり、義実家と関わることで価値観が変わったのです。
パートナーにジェンダーと家事をつなぐ紐の存在を気づかせ、紐を断ち切ることができれば、少なからず価値観が変わるのではないでしょうか。
夫婦は平等。でも、たくさん稼ぐ方が偉い?
共働きで家事負担をしないパートナーが、家事をしない理由に「自分の方が稼いでいるから」という理由を挙げているのを見かけます。
実は、私も家事をしない元彼に言われたことがありました。
「あなたより、自分の方が稼いでいる。だから家事はあなたが負担するのは仕方がないだろう」
これを言われてしまうと「そうだね、仕方ないよね」と、大量の家事負担を受け入れてしまいがちです。もちろん当時の私もそうでした。
でも、私が転職して長時間労働になり、所得も2倍に増えて元彼よりも生活費を多く負担するようになっても、元彼は家事負担をしてくれませんでした。
それどころか、これを理由に家事分担を申し出たところ、
「俺より稼いでいるって威張ってプライドを傷つけて、家事をさせようというやり方が汚い」
と批難されるはめに。「家事をしないための言い訳だったんだ」とはじめて気が付きました。
最初に所得差を理由に家事を押し付けておきながら、立場が逆転すると弱者の視点から批難されては解決の糸口を見出せず、別れを決意したのでした。
結局平行線のまま同棲を解消するまで、多く稼いで多く働いている私が、全ての家事を負担し続けることになったのです。
その後夫と結婚し、私はもう一度転職をして残業がない会社に勤めました。
夫は相変わらず深夜帰りの激務だったので、家事は私が8割ほど負担することに。
所得は夫の3分の1程度、残業はほぼなかったので、まったく負担でも不満でもなく、難なくこなしていました。
しかし、夫的にはとても申し訳ないと感じていたようで、こんな会話がありました。
夫「お掃除ロボットとか欲しい?買ってあげる」
私「なんで?」
夫「フルタイムで働いているのに、家事をたくさん負担させているから」
私「私の方が残業ないし、所得少ないし。不満はないよ」
夫「所得は関係なくない?」
私「どうして?」
夫「年収が1000万違っても、洗濯機を回すのにかかる30分は平等じゃん。所得が多ければ偉いってわけじゃないし、家事は偉くない方がする事でもないでしょ。手が空いている方がやるのが合理的」
またしても、家事に対する考え方の違いを目の当たりにして、目からうろこでした。
夫「でも、今の時代はお金があれば家電とか外注で家事負担を減らせる。俺には時間はないけど、稼いでいるからお金がある。お掃除ロボットとかの数万円くらい安いもんじゃない?」
私は「たくさん稼いでいる方が偉いから、偉くない方に家事を命じることができる」という価値観を無意識のうちにもっていました。その考え方がどこから来ているのかというと、やはり小さいころから共に過ごしてきた自分の両親です。
夫の発言から現代の夫婦に主従関係はないという当たり前のことを思い出し、ハッとしました。
元彼とのやりとりで良くなかったなと思うのは「所得が多ければ偉い」という価値観を前面にだして、お互い張り合ったことです。
もっと夫婦(パートナー)は平等であるという前提で会話をすれば、結果は違ったような気がしました。
気持ち良さの伴う家事を目指す
元彼が一切家事をしてくれないので、少しでも家事をしてもらえるよう、言動にはとても気を付けていました。
例えば、以下のような心がけです。
- 頼むときは命令ではなく、丁寧にお願いをする
- 断られても、怒らない
- 家事が上手でなくても、気にしない
- 少しだけでも家事をやってくれたら、欠かさず感謝する
- 彼は心底家事嫌いな人だったので、ちっとも改善はしませんでしたが、揉めた割にはケンカをせず、仲が良かったと思います。
この時の心掛けは、その後夫に家事を負担してもらう上でもかなり役立ちました。
夫は自発的に家事を見つけてこなしてくれるので、家事をした痕跡を見つけ次第「〇〇してくれたの?ありがとう!」と言うと、とても嬉しそうにします。
因果応報という言葉の通り「ありがとう」と言うと、私が家事をした後には同じように「ありがとう」と言ってくれます。
どんなに自己犠牲的に家事をしても当たり前だという態度をされては、些細な家事でも大きな負担とストレスに感じてしまいがちです。
しかし、一言感謝されるというだけで、家事の心的負担が軽くなるものだと思いました。
家事をすると感謝される。そうすると心地よい。もっと相手のためにしてあげようという気持ちになる。
こういったポジティブなサイクルがお互いの中にあると、家事で揉めることは少なくなるのだと思いました。
無意識に刷り込まれた価値観を見直す
今日では男女平等の意識が広まってきており、家事をする意識が高い男性も多くいます。
しかし、家事とジェンダーの紐づけや、昔ながらの夫婦の主従関係の価値観は、今もまだ日本人の奥深くに眠っているのです。
私の場合「所得が低く偉くない自分が家事をするべきだ」という考えに無意識に支配され、あえて負担を負うような行動に出てしまっていました。
私が義実家で感じた衝撃のようなきっかけがないと、こういった古い価値観が自分の中にあることに気が付くことは難しいと思います。家事分担の解決は、夫婦ふたりだけではできないのかもしれません。